里山がどう変わったか 2

2.里山はどこにあるのだろう

 環境省は里地里山は国土(3,780万ha)の4割を占めるとしている。これは日本全体を約1km四方の四角形で区切り,その中で二次林,草地,農地の合計面積が50%以上を占め,かつ2つ以上が混在しる場所を里山地域と見なした場合の見積もりである。環境省では,同時に,日本全体の二次林を5タイプに分けている。これは主に気候によって決まる。これは重要なことで,遷移が進んでも落葉樹のままのブナ帯と遷移によって常緑広葉樹林となる暖温帯では,その影響は全く異なる。

 特徴ある里山を絞り込むには,地形や土地利用などランドスケープによる里山の分類が必要である10])里山は,二次林と農地が混在しているだけでなく,人為撹乱があることに特徴がある。したがって,もともと自然撹乱によってモザイクな環境が生じていたところで,里山を代表する生物の多様性が高いことが予想される。たとえば,洪積層の丘陵地や風化の激しい花崗岩地帯,火山性の地層で地滑りが生じているような場所である。こうした場所には,急傾斜の棚田,水田と樹林が複雑に入れ込む丘陵,増水の影響を受ける氾濫原の水田などがある(図3)。図はカスミサンショウウオの分布や魚が遡上する水田などとも一致する。

 もっとも,こうしたところでは,人による撹乱がなくても,自然撹乱によって生物多様性が維持されてきたに違いない。しかし,人による撹乱がそうした生物の生息場所を増やしたことは事実である。あるいは,数千年間の温暖期に西日本では絶滅したはずの生物を焼き畑や里山管理が救ったのだという考えもある15)

図3.滋賀県の特徴のある里山 約1km四方の3次メッシュの中で,棚田(褐色),森林に接する水田(緑色)の面積が大きい場所を示した.棚田は傾斜5.7度以上とした.氾濫原は琵琶湖面より2m以内の標高の地域とした.