アカシアの雨が降る時

36年ぶりに演劇を観た。鴻上尚史 作・演出の『アカシアの雨が降る時』。

71歳の香寿美(竹下景子)が認知症になるところから始まる。今の自分は20歳だと信じ、その記憶の上に生きている。孫の陸(鈴木福)を当時の恋人と勘違いし、孫の父親=自分の子である俊也(松村武)が誰か認識できない。

香寿美は何をしたいのかわからないまま、専業主婦として生きてきた。認知症で20歳の大学生に戻ったことによって、やりたかったことのひとつをやろうとした。ベトナム反戦運動だ。1972年に相模原からベトナムに向かう戦車を市民が止めた。香寿美は座り込みに誘われたが、参加できなかった。2023年の大学で、学生にベトナム反戦を訴える。当時の映像や香寿美が歌うフォークソングが、恐らく私の年齢以上の観客の共感を呼び起こす。

 

俊也と陸もそれぞれ悩みを抱えていたが、関係は疎遠で互いを理解しようとしていなかった。

 

香寿美の看病をめぐって、3人が一緒に料理をしご飯を食べることで、理解と共感が深まる。

 

プロジェクションマッピングと笑いをちりばめた素敵な演出だった。

 

上演前に鴻上が観客席を回って、パンフレットを売っていた。

 

ちなみに前回見た演劇は宇野重吉が肺がんの手術後に全国巡演した『三年寝太郎』でした。